COVD-19に対するワクチンは、日本はビオンテック社とファイザー社のメッセンジャーRNAワクチン(Pとします。)、モデルナ社のメッセンジャーRNAワクチン(Mとします。)、アストラゼネカ社のアデノウイルス・ベクター・ワクチン(Aとします。)を輸入します。第3相試験で、PとMは約95%の発症予防効果がありましたが、Aは、日本で行われる通常用量の2回接種の場合、62%の発症予防効果に留まりました。実は、Aの第3相試験では、1回目の用量を半量にしてしまった(2回目は通常用量)接種スケジュールが誤って行われていて、こちらでは90%の発症予防効果で、通常用量の2回接種より有意に良好な成績でした。ただ、日本での治験は通常用量の2回接種で行われているので、一般接種も、通常用量の2回接種で行われる予定です。Aは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の遺伝子を体内に導入するのにアデノウイルス・ベクターを使っているので、Aの1回目の接種によってアデノウイルス・ベクター自体に対する抗体が出来てしまい、2回目接種の効果が減殺される可能性があります。実際に、Aの第2相試験では、2回目接種前の抗ベクター抗体が高い場合、2回目接種により誘導される抗SARS-CoV-2抗体が低いという結果でした。1回目接種を半量にした場合には、抗ベクター抗体の値も通常量の場合よりも低いと考えられるので、2回目接種後の発症予防効果が高く出た可能性もあります。更に、アデノウイルスは、現在、遺伝子治療において標準的に用いられている有力なベクターなので、Aの接種によって抗ベクター抗体が出来た人では、将来の遺伝子治療が難しくなるリスクが考えられます。その意味ではPとMのワクチンを打ちたいところですが、今のところ、ワクチンは選べない前提です。Aのワクチンでも重症化予防効果は認められていますので、COVID-19のリスクが高い人は、Aのワクチンでも打つべきだと考えられます。