風疹は、発熱、発疹やリンパ節腫脹を特徴とするウイルス性疾患です。症状は幅広く、重篤となる場合もあれば、感染してもはっきりした症状の出ない場合もあります。重要なのは、妊娠20週頃までの妊婦が風疹ウイルスに感染すると、出生児が先天性風疹症候群(CRS)を発症する可能性があることす。CRSでは、動脈管開存、難聴、白内障、色素性網膜症などの先天性疾患や、新生児期の溶血性貧血、間質性肺炎、髄膜脳炎、精神運動発達遅滞などが起こりますが、日本でも、風疹が流行した2012-2014年には45名のCRS患児が報告されており、現在でも、風疹が流行した場合には、多数の患児が発生するおそれがあります。そのため、男女ともがワクチンを受けて、まず風疹の流行を抑制し、女性は感染予防に必要な免疫を妊娠前に獲得しておくことが重要です。
日本では1977年~1995年までは中学生の女子のみが風疹ワクチン定期接種の対象でしたが、1994年の予防接種法改正により、対象が生後12カ月以上〜90カ月未満の男女に変更になり(経過措置として、12歳以上〜16歳未満の中学生男女も対象)、学校での集団接種が保護者同伴での医療機関での個別接種に変更されたため、幼児の接種率は比較的高かったものの、中学生での接種率は激減しました。2006年度からはMR(麻疹・風疹)混合ワクチンが定期接種に導入され、1歳と小学校入学前1年間の幼児の2回接種となり、また、2007年の麻疹の流行を受けて、2008年度~2012年度の時限措置として、中学1年生あるいは高校3年生相当年齢を対象に、2回目の定期接種が原則MRワクチンで行われました。このようなワクチン行政の変遷を反映して、年齢によって抗体保有率に大きな差があります。特に、30代から50代の男性で抗体保有率が低く(7割から9割)、また、女性でも抗体価の低い人がいます。
近年、海外からの旅行者が急増しているため、ワクチンが普及していない国からの、風疹に感染した渡航者により、国内での流行が惹起されることが懸念されています。自分を罹患から守り、CRSの患児をゼロにするために、性別を問わず風疹の抗体価を調べ、必要な場合にはワクチン摂取を受けるようにして下さい