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健康科学コラム

No.36:2023年のコロナワクチン

5月8日からSARS-CoV-2ウイルスの感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同様の5類感染症となり、感染者や濃厚接触者の待機期間や、イベントや飲食店での制限が原則として無くなります。屋内でのマスク着用も原則不要(個人の判断)となります。ただ、ウイルスの性質が大きく変わるわけではなく、2023年も感染の波は繰り返すと考えらます。そのため、COVID-19に対する医療は段階的に移行することになっていて、ワクチン接種や治療費については当面は公費負担が続きます。COVID-19ワクチン接種は、今後は高齢者や併存疾患がある人には2023年は半年に1回程度の接種を行っていく予定ですが、どのワクチンを用いるかは今後の変異株の推移とワクチンの開発状況によって検討していくことになります。現行のオミクロンBA.5変異株対応型2価ワクチンは、以前の武漢株に対する免疫を強く誘導する反面、残念ながら、現在流行しているBA.5やその派生株に対する免疫誘導効果が、期待されたほどには強くはないことが明らかになっています。これは既に武漢株を用いたワクチン接種を数回繰り返してきたため、接種を受けた人の免疫が、武漢株に対して反応し易く、他の変異株に対しては反応し難くなっているからだと考えられています(免疫の刷り込み)。2023年2月現在、米国ではオミクロンXBB.1.5という亜型が急速に頻度を拡大していて、次の世界的な流行株になるのではないかと予想されていますが、現行のBA.対応型2価ワクチン接種後のXBB.1.5に対する免疫誘導は、武漢株に対する値と比較して、100倍以上低いと報告されています。今後のワクチン接種は、60~70%程度の重症化予防効果に留まると考えられ、高率に感染を防ぐような強い効果は期待出来ませんが、感染を経験している人では、未感染の人より、ワクチン接種後の効果が高いことが知られています。2022年の間にもCOVID-19は軽症化を続けていますし、ワクチン接種と感染の繰り返しによりウイズ・コロナに必要な免疫が強化されていくので、感染を過度に気にせずに過ごす方がいいと思います。