「酒で身体を壊す」というのは良く知られた事実ですが、酒好きにとっては、完全な禁酒は、かえってストレスになり、生活のクオリティーを損ないます。そこで、アルコールはどの様な飲み方でも身体に悪いのかが問題になります。
フランス料理は、バターを基調とし、動脈硬化の原因となる飽和脂肪酸が多く含まれているのに、フランス人では、アメリカ人に比べて狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患の発生が少ないことが知られています。これを「フレンチ・パラドックス」と言いますが、この現象について科学的に調査してみると、フランス人ではワインの消費量が多いことが原因であることが知られるようになりました。特に赤ワインに含まれているポリフェノールが、抗酸化作用を示すことにより、動脈硬化を防止することが確認されました。ただ、その後の多くの研究により、赤ワインだけでなく他のアルコール飲料でも心血管疾患の発症が抑えられることが明らかにされました。例えば、38、000人以上の男性を対象とした研究では、1日50グラム以上の飲酒(中等度の飲酒)の場合を含めて、飲酒量が多いほど、また、1週間に飲酒する回数が多いほど心筋梗塞の発症が少ないという関係がみられました(New England Journal of Medicine 348号(2003年)109頁 )。
しかし、いずれにしても、過度の飲酒は肥満、高脂血症、高血圧、糖尿病を明らかに悪化させ、また各種の消化器癌の原因にもなります。各種研究結果を総合して考えた場合、日本人では、健康状態に留意しながら、週に150グラム、多くても300グラム以内(1日換算で、ビール大瓶で1本から1本半、日本酒1合から2合、焼酎で100mlから200ml、ワインでグラス2から3杯、ウイスキーシングルで2から3杯半程度)にとどめ、かつ週2日程度の休肝日を設けることが妥当と言えるでしょう。
ただし、お酒はカロリーになりますので、食事と合わせた総量で適正なカロリーとなるよう心がけてください。
【 各種飲料のアルコール量とカロリーの比較表 】
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