平成18年12月20日に公布された改正貸金業法においては、金利体系の適正化がその大きな柱の一つとなっています。新法では、利息制限法に定める金利を超える部分においても、債務者が任意で支払った場合には有効な弁済とみなされる、いわゆるグレーゾーン金利を廃止し(旧法第43条の削除)、上限金利を利息制限法で定める金利に合わせました(新法第12条の8、元本10万円未満の場合年20%、10万円以上100万円未満の場合年18%、100万円以上の場合年15%)。
ところが、貸金業法の細則である貸金業法施行規則案においては、当初、金融庁の案は、金銭の受領・弁済における機械(ATM)の利用料の上限を3万円未満の場合420円、3万円以上の場合630円としていました(同規則案第3条の2の3)。
この場合、たとえば元本40万円で毎月3万円ずつ返済すると仮定すると、年間で7,560円をATM手数料として支払うため、従来のATM手数料を加えた実質的な金利は、額面上の金利プラス1.89%にとどまります。
しかし、ローンを返済した後、短期間のうちに、返済した金額だけローンを借り増しするという、多重債務者に多く見られるパターンにおいては、実質的な金利は利息制限法に定める金利をはるかに超える結果となります。
たとえば、元本10万円で毎月3万円を返済してはまた同額を借り入れる、ということを繰り返すと、年間のATM手数料は15,120円となり、実質的な金利は額面上の金利より15.12%も高いものとなります。
本改正の趣旨の一つは金利体系の適正化でしたが、このようなATM手数料を認めると本改正の趣旨が害される結果となりかねません。
金融庁案は銀行のATMの設置・維持費用を積み上げて算出された数字をATM手数料の基礎としているようですが、銀行のATM利用手数料が105円又は210円であるのと比較すると突出している印象が否めません。
そのため、当選したばかりの参議院議員、特に弁護士である森雅子議員、丸山和也議員、古川俊治が中心となって、ATM手数料の引き下げを強く要請しました。
この結果、政省令案においては、1万円以下の借入れや返済の場合のATM手数料は105円、1万円を超える場合は210円にそれぞれ引き下げられました。ほぼ決まっていた政府案を変えさせることができ、議員となった意義を感じました。
ATM手数料については、一応の決着がつきましたが、貸金業法の改正だけで改善されるものばかりではありません。
たとえば、若年層を中心にぜいたく品の購入等を目的として貸金業者から借り入れ、自己破産を申し立てるケースも後を絶ちません。
この問題については、消費者教育を十分に施す等の施策を通じて安易な借入れを防止する必要があると思います。
|
2007.10.20