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健康科学コラム

No.27:新型コロナウイルス感染症のPCR検査

新型コロナウイルス感染症については、PCR検査の実施量が増えてきましたが、皆様には、是非、この検査の特性や限界を理解していただきたいと存じます。PCR検査は、鼻腔や咽頭に存在するウイルスのRNAを測定する方法ですが、感染していても、ウイルスが十分に鼻や喉に出て来ない場合や、検体が適切に採取できていない場合には陰性になります。感染している人の発症日から2日くらい前から発症後2週間ぐらいが陽性率が高くなりますが、発症より4日以上前では、偽陰性率(感染している人を陰性と判定してしまう確率)がとても高くなります。総合して、感染者を正しく陽性と判定する確率は70%程度です。ですので、PCR検査で陰性であることは、決して「感染していない」ことを保証するわけでは決してありません。一方、PCR検査はウイルスのRNAが鼻や喉から排出されていれば陽性になりますが、それは、感染性のウイルスの存在を意味するわけではありません。発症後2ヶ月もPCR検査で陽性が続くような事例も報告されていますが、発症後10日間ぐらい経てば、感染性ウイルスは排出されなくなり、人に感染させることは無くなります。

さらに、ウイルスが検体中に十分に存在すると仮定した場合でも、検査である以上、必ず精度の限界があり、背景感染率(検査を受ける人の中の感染している人の割合)の影響を受けます。PCR検査の感受性を80%(感染者の中の80%を陽性と判定できる),特異性を99.9%(非感染者の中の99.9%を陰性と判定できる)、この検査を10,000人が受けると仮定します。背景感染率が30%の場合、非感染者は7000人ですが、このPCR検査は感染者3000人のうち600人を陰性と判定してしまうため、陰性的的中率(陰性者の中の非感染者の割合)は92.1%で、PCR検査が陰性であっても13人に1人は感染していることになります。逆に、背景感染率が0.1%の場合は、感染者は10人だけですが、非感染者9990人のうち10人を陽性と判定してしまうため、陽性的的中率(陽性者の中の感染者の割合)は44.4%で、PCR検査が陽性であっても、2人に1人は感染していことになります。

皆様には、このようなPCR検査の限界をご理解下さい。