障害者自立支援法は、自立と共生の社会を実現し、障害を持つ方が地域で暮らせる社会を実現するという理念の下に制定され、平成18年4月(一部同年10月)に施行されました。この法律により、以下のような趣旨の制度改革が行われました。
(1)3障害の施策を一元化 ばらばらな制度体系となっていた身体,知的,精神の3障害の支援制度を一元化して制度間の格差を解消するとともに、市町村に実施主体を一元化し、都道府県はこれをバックアップする体制とする。(2)利用者本位のサービス体系に再編 障害種別ごとに施設・事業が異なっていた複雑な体系を再編して、6つの日中活動に再編して日中活動の場と生活の場を分離し、地域生活支援・就労支援のための事業や重度の障害者を対象としたサービスを創設する。また、施設への報酬を月払い方式から日払い方式に変更し、利用者の日々のニーズに合わせて、種々のサービスを組み合わせて利用することを可能とする。(3)就労支援の抜本的強化 新たな就労支援事業として、就労移行支援事業(一般企業への就労をめざし、一定期間、知識・能力向上のための訓練を行う)と就労継続支援事業(一般就労が困難な方に働く場を提供しつつ必要な訓練を行う)を創設し、雇用施策との連携を強化する。(4)支給決定の透明化,明確化 支援の必要度を判定する客観的基準(障害程度区分)を導入するとともに、審査会の意見聴取を行うなど支給決定プロセスを透明化する。(5)安定的な財源の確保 新たな利用者が急増すると考えられるため、国の費用負担の責任を強化(費用の1/2を負担)するとともに、利用者も応分(原則1割)の費用負担をして、皆で制度を支える仕組みをつくる。 しかし、利用者のサービス費用の1割負担は、一般に就労機会に乏しい障害者にとっては重い負担になり、多数の障害者の団体の皆様から制度の見直しの要望がありました。 利用者負担については、利用者の所得や資産に応じて減額措置がありましたが、十分な措置とはいえなかったようです。 そこで、政府は平成18年からの3年間で1,200億円の特別対策を実施し、(1)利用者負担の更なる軽減として、負担感の大きい通所・在宅、障害児世帯を中心に負担の上限額を引き下げ、(2)日割り化に伴い減収している事業者に対する激変緩和措置として保障額をサービス提供にかかる費用の80%から90%に引き上げ、(3)事業者に対する支援を行っています。障害福祉サービス関係予算も、平成19年度は前年比11.4%、平成20年度(概算要求)は同9.4%、それぞれ増加しています。 しかし、依然として障害者団体の皆様からの要望は強く、障害福祉サービスを提供する側についても、(1)事業者の中には日割り化により収入が減少するケースがあり、その経営の安定を図る必要があり、また、(2)事業者が雇用するヘルパーも報酬が低いため、障害福祉サービスの担い手たるヘルパーの確保が困難となるおそれがあります。 さらに、低い工賃の改善を含む就労支援事業の実効性の確保も重要な問題です。 障害者自立支援法に対しては、その全面的な廃止を求める声も少なくありません。 しかし、障害者の社会における生活環境を本質的に改善していこうという法律の理念は、決して誤ったものとはいえません。 今後は、その理念を真に実現するための措置が十分に採られているといえるかどうか、継続的に検討する必要があると考えています。 |
2007.12.12